カテゴリタイトルを読書感想文にしようと思って思いとどまった件。

ちょっと活字(※論文以外で)が読みたい症候群になったので本を借りたりしています。

ケータイ小説のリアル (中公新書ラクレ)

ケータイ小説のリアル (中公新書ラクレ)

そういえば文芸部の合評で「恋空」を2回くらいやってそれなりに議論したんだが、結局携帯小説ってなんぞや、とか、何がそんなに気に食わないのかについては議論してなかったなー、と思いだして借りてみた。しかし誰だ、この本をハンティング*1してきたやつは。
筆者は腐女子とかオタク女子についての新書も書いている人のようで、そういうサイトも回っているようだ。ライターさんの努力が忍ばれるなぁ…

以下、気になった記述を抜粋していってみる。

>都心では「ケータイ小説」書籍は売れないが、地方では売れる
→田舎の中学生とかは携帯もっていない子も多いから本でも売れる、地方には「恋愛信仰」が残っている
>東京には憧れない →そのへんが「DEEP LOVE」の時との違い、らしい
>レイプ、中絶、援助交際…とかいう過激さで売れているのではない
→性行為=不良、堕落、みたいな流れでもない

という記述の後に第3章「恋空は何故特別なのか」。キター!!

>リアルではない恋空のレイプシーン
→ようは「恋人との幸せなセックス」との対比であり、その後の「汚れた自分」を肯定してもらうためにある。妊娠、中絶も同様に、「最愛の彼氏からの承認」を得るための過程として書かれる。
想像、妄想の上での「リアル」(本文「頭の中だけに存在する「リアル」」)
>ポジティブシンキング、不幸の連続かと思いきやそうでもない、内省しない主人公
自己啓発本的な意味で売れたのでは
…ちょ、お、ま。

>妄想 とくに女の妄想は面白い
>妄想が激しいのは美人
…ここはあまり同意できないというか、=で繋がらないんだが。ちょっと違うと思う。
>「夢小説はヘタすると個人の妄想の垂れ流しになる。読んでいて面白いものも多いが、それ以上につまらないものも多い」
…ちょ、激しく同意wwwwww
>書き続けることができる作家は読書量の多いタイプがほとんど
ケータイ小説は作家を育てない
…筆者はそれはそれでいいんじゃない?という立場のようだけど…。たしかにいち素人が面白いものを書いて、それが売れるという出版の上での新しい流れのもつ可能性とか(ボーカロイドとかもそういう流れの中に位置づけられるのかもしれんとふと思った)、そういう素人=作家になりたいわけじゃないからいいじゃん、という考え方もありなんだろうけど。後述する理由も含めて、本当にそれでいいんだろうか?


まとめとして。
最初に「何がそんなに気にくわないのか」ということを書いていたんだが。本として売れることが気に食わない、とかはいったん置いといて(それについての記述もあったけど今回は省く)。
あたしが気に食わなかったのは、まさにご指摘の通りの「妄想」だからなんだと納得した。て言うか合評でここまで指摘できそうな気もしてきたからちょっとショックだ。確かに似ているといわれれば似ているんだ、どりいむに。書き手と読み手が違うだけの問題で。どりーむ自体が個人の妄想すぎてあまり好きじゃない自分としては、面白くないどりーむを読まされたら不愉快で当然だ。よーくわかった。
でも明らかに違うと思うのは、出版によりより多くの人に読まれるという状況になってもなお、「事実」を気取ろうとする点なのではないか。でもってたぶんそれが一番あたしには気に食わないんだろう。
どりいむでも同人誌でも、「これは●●とは一切関係がありません」という一文、あるいはお約束ごとがある。これは「妄想」です、その上でお読みください、というのがルールのはずだ。妄想なら笑って許せるけれど、それを事実気どりで世間にだすのはいいの?少なくともフィクションであることは明言するべきじゃないのかい。
「最愛の彼氏からの承認」?ふざけるな。レイプは暴力だし、妊娠は別の命を授かることで、流産は死だ。そんな安っぽい感情をみたすためにあるんじゃない。
主な読者が女子中学生とかならなおさらだ。今後そうやって素人が書いた面白い文章を書籍として売るとして、フィクションであることをちゃんと明記しないつもりなのだろうか。「リアル」らしさが売りなのはわかる。わかるけど、それってどうなの。情報を発信する側としては。
「リアル」より「リアル」らしさ、ようは「リアリティ」を信じる、って言ってたのは岩本通弥だったっけ。「現代人は遠野物語のころとさほど変わらない」っていうのは名言だと思っている。なんだかんだで人類の思考はまだこの社会についていけてないんだな、と最近つくづく思う。

と、腹を立てつつ書いてたら気がついたお。
これってまゆ様に超あてはまるんですけど
快感フレーズがはやったのってそういやあたしが中学生だったな…。
まあいくら中学生でもそのうち現実くらい理解できるだろうし、そんなにカリカリしなくてもいいか…って思ったけど、やっぱあの「ありえない」設定丸出しの漫画と一緒にくくるのは違うかも。あきらかすぎるフィクションだしな。「普通の女の子」のはずの愛音ちゃんがEカップだったのには吹いた。
今なら言えるよ、さすがまゆ様。ねーよ。

たしかに現実に疲れているのなら「痛み」を書きだすようなものなんて読みたくないかもしれない。でも本当の痛みを想像したり、近づかないでわかることなんてないし、「痛み」から「再生」を行えるのが物語だと思うんだが。そういう中で知る「愛」の方が、よほど尊いんじゃないだろうか。
そういう骨太な物語が、若い子の近くにはないんだろうか。あったとしても届かないのか、手が出せないのか。文字を読みたいという気持ちがないわけじゃない、ということは、やりようによっては届くはず。そんなことを考える。
「物語」はその程度のものじゃないはずだ。


なんか長くなった上にまとまってないけど。
結論として。
妄想は悪くないけど、分別は付ける!!
妄想をヘタに垂れ流さずスマートに楽しめる大人になりなさい!!以上!!

*1:ブックハンティングなる、学生が好きな本を買える企画があったらしい。ちなみに妖怪とかの本もあったのでGJなヤツが複数名いたと見る。しかしそんな美味しいイベントがあったとは…