1月頭のある日曜日の話。

その日は真冬の山中をひとり歩いていた。

盛土が剥がれて天井石が露出して、落ち葉で埋まり切ったかつての石室の上に立つ。
かつてここに眠っていたであろう人、のことを想う。
流れ込んだ土と落ち葉でもうその痕跡すら見つけられないのだろうけど。

ふいに女の声がする。女の書いた長い長い手紙が、その声で語られる。
歩きながら、ぼんやりと考える。
死の床で、女はかつての思い人であった幼馴染に手紙を書いた。
男はその長い長い手紙を持って、山中を歩いている。

思い出の岩屋で手紙を燃やしながら、男は何を考えているのか。
女の有りのままを受け入れた男は、女が別の男と結婚するのを止めなかった。
女は男が別の女と結婚したことに嫉妬し、けれど何もできなかった。
流れにあらがっていたら、どうだっただろう。
有りのままを受け入れた男は、正しかったのか、間違っていたのか。

どうして女は男に手紙を書いたのか、考える。

夫に見捨てられて、かつての美しさもなくして、ただ死を待つ床の中で女が手紙を書いた理由。
ひとり死にゆくことの寂しさ。男の想いを裏切って、見栄や外面だけで別の相手を選んだことへの後悔。
けれどそんな生き方を間違ったものと思いたくないという、プライドみたいなもの。
そういうものをすべて含んで、それでも男に伝えたかったとしたら?
その伝えたかったものは何なのだろうか。


…とかなんとかいうことを、真冬の祝日の山ん中で、後輩たちが石室実測を終えるのを待ちながら考えていたわけですが。
真冬じゃなかったら野外でする読書もそんなに悪くないんですけどねぇ。

ちなみに完了して大学帰ったら夜8時でした。日が暮れてからは爆笑ものでした。夜景がきれいでしたが、終わったら寒くて何もやる気になれず。どちくしょう。
ちなみにちょっとした登山コースの横の古墳群だったので、登山者が地味にいっぱいいました。何故かカップルもいたらしい。新春から、ていうか真冬に何をやっているのかと。

来週は地味に発表とかでハードな予定なので、無事終わったら読書感想文書きたし。